私は現在40代前半で、企業の経営戦略や組織体制を作るお手伝いをしています。
プログラミングスクールに通った当時も同じような仕事でした。唯一、社内広報をお願いする際にプログラマーと打ち合わせをするくらいで、プログラミングとは程遠い世界にいました。
ただ、業務の過程で、集客が課題であり、既存客以外の顧客を開拓する必要に迫られていました。もちろん日々の営業活動もやったのですが、それ以外の手段を模索した時期でした。
専門の会社に依頼することも考えたのですが、その後の保守や価格を考えると、自前が良いということになりました。
Webサイトの制作と管理を続けられるように、プログラミングスクールに通うことになったのです。
目次
覚悟が求められたITブートキャンプ
私は、株式会社Cajonさんが運営されているITブートキャンプという短期集中コースを選びました。現在は在宅ワークを行う人向けの、女性限定コースや美容業界限定のコース、マーケティング人材育成のコースなど、幅が広がっています。
私がこのコースを選んだ理由は3つあります。
- 期間限定の短期集中コースだったこと(私の頃は、場所と教材が提供され、30日という期間内に終わりないさいというもの。今は期間が延長されている。)
- 講師がその場にいて、直接指導を受けられたこと(数メートル先に講師がいました。)
- 覚悟を求められたこと
短期集中のメリット
私が受講した時は、1ヶ月間の集中カリキュラム(直接指導)、残り1ヶ月のサポート期間(リモート)の2ヶ月コースでした。振り返ると、期間が決まっていたことへのプレッシャーが学習を後押ししました。
「今ここで解決して、次に進まなければ期間内に終わらない」といつも考えていました。
私の場合は、1日15時間以上やっていました。睡眠、食事、小休止以外の全ての時間を学習と制作に費やしました。
加えて「理解への意欲と関心」が途切れないことの効果は想像以上に大きかったのです。絶対に「次の日にやろう」とはなりませんでした。
直接確認できる安心感
同様に振り返れば、近くに講師がいる安心感も大きかったと思います。実際に制作を行なっているフロントエンジニアの方が講師として指導してくださいました。
求められた覚悟
このコースを申し込んだ時に「中途半端な気持ちの方はやらない方が良いですよ」と強く念押しされれた上に、受講に向けての面接までありました。
ただ私は同時に株式会社Cajonさんのこのコースに対する覚悟を感じました。そこで「逆に覚悟さえあれば、サポートもしてくれ、会社の目標も達成される」と思ったのです。
コース内容、学習環境について
ITブートキャンプはコンセプトが「手を動かすことで学べ」でした。そこで、カリキュラムは「理解」よりも「制作」を重視し、制作物を次々に作っていく過程で理解を深めていくスタイルでした。
カリキュラムの特徴
カリキュラム内容
カリキュラムは大きく2つ、Webデザイン(HTML/CSS/Photoshop/Illustrator)とWPコースに別れており、それぞれ8-10程の章があり、それぞれに制作課題がありました。
これは一言で言えば「満腹にさせないカリキュラム」でした。つまり、内容は解説書のようにはなっていませんでした。
肝心な考え方についてのヒントは書いてありますが、それを自分のものにするには、自分で調べたり講師に聞いたりしなければなりませんでした。
自習形式
「学校なのに教えてくれないの」と思うでしょう。大学のようなイメージを持つと裏切られることになります。一方的な講義などはありません。自分のペースでカリキュラムをこなしていく自己学習スタイルです。
今となっては、このスタイルがベストでした。頭で理解することと実践できることは大きく違います。頭で理解したことをコードに反映させても、思い通り動かないことは数限りなくあり、実践の中で学んだことが多かったです。
よく「今後、その都度誰かが助けれくれるわけではありません」「独力で問題を解決する能力を養わない限り先はありません」と言われたものです。
やりたいことが山の10合目だとすれば、基本的に講師の人の助けを得られれば、8合目までは誘導してくれます。あとは、自力解決です。仮に、時間がかかっても、ヒントが与えられ続けることで到達は可能なカリキュラムでした。
実際、私の講師は本当にヒントを教えてくれるだけでした。例えば「displayの使い方を調べてみてください」など、解決するためのキーワードを教えてくれました。
加えて、メモに適したアプリ、メモの作り方、検索の方法まで教えてくれました。結果、私のメモ帳は増えていくのですが、これは今でも財産です。
もちろん最終的に質問への回答は来るのですが、カリキュラムを通じて、解決のプロセスには気を遣って指導されていました。
周囲の学生
1人で勉強するスタイルですから、教室は終始静かでした。今は、オンラインに軸を置いているようです。学生は社会人、大学生、就職活動中の方など多様でした。
中には仲良くなりすぎて、学習がおろそかになる人も少なからずいました。お互いに高め合うことができる人であれば歓迎すべきですが、逆は、害でしかありません。
みなさんが人に流されやすい、気持ちが弱いタイプであれば、より付き合う人の見極めが必要です。
料金
私はこのWebデザイン+WPコースに対して290,000円を払いました。現在では、カリキュラムも改定を重ねてボリュームが増え、348,000円(税抜き)となっています。
これを高いとするか、安いとするかは、本人の「覚悟」次第です。実際、企業の研修の一環で来ていた方もいましたが、真剣さは違いました。
問題意識を持って、自分のポケットから払って受講している人の真剣さの方が明らかに高かったように思います。
コース終了後のサポート
規模は大きくないようですが、株式会社Cajon自体人材紹介業も行なっており、受講中にも何件か就職情報のお知らせは来ていました。また、事前に就職サポートをお願いしておくと、事前に面談をしてくれました。
企業への就職以外にも、案件の紹介なども行なっていました。実際の案件の一部を任せてくれたり、案件そのものを任せてくれたりするようです。その際の技術的なサポートも行なっていました。(現在は在宅ワーカー向けに切り替わっているようですので、実際に問い合わせて確認してください)
実際に、一緒に学んだ人たちの中にも、Webデザインの企業や、マーケティングスタッフとして現在も働いている人はいます。ただ、就職を希望する全ての人たちが思いを遂げたか、というとそうではありません。
これは後述するように、企業の仕組みの問題というよりも、本人の問題も大きいのではないかと思っています。
卒業後の仕事について
卒業後の進路として、周囲には「フリーランス」として仕事をしたい、エンジニアは高収入だし、転職サポートもあり安心と言っていた人たちがいました。
しかし、カリキュラムでさえ期間内に終わらず挫折した人たち、カリキュラム終了後、企業から戦力として選ばれなかった人たちは実は少数ではありませんでした。
甘い言葉に惑わされない。
「フリーランスとして自分のペースで生きる」「高収入」「就職の完全サポート」など、甘い言葉が人を吸い寄せます。ですが、これらはエンジニアとしての実力があるからこそ得られる結果です。
コースを卒業して、すぐにフリーランスとして認められるほど、現実は甘くありません。
私の知るほとんどのフリーランサーは、企業で働き、評価され、必要とされるからこそ、企業を離れてもその会社からの依頼がきたり、別のお客さんも紹介されています。
確かな収入源を確保できるからこそ、結果、フリーを選択でき、収入も高くなっている人たちです。
翻って、生徒の中には「フリーランスになりたい」と言ったにも関わらず、1日の学習時間は10時間にも満たない人もいました。
また「講師の教え方は不十分だ」と言って、自分で考えない人もいました。その人の口癖は「で、その次にどうすればいいのですか?」でした。
同様に、コースを卒業すれば就職が約束されるほど楽な世界ではありません。企業が人材を紹介する以上、そこには紹介者側に責任が生じます。それは紹介先の人材ニーズに応えるという責任であり、紹介元も、受講生も、それを満たす必要があります。
本気で就職を考えるなら、カリキュラムへの向き合い方、制作物のクオリティなど、真剣に取り組んでください。
カリキュラムへの取り組み姿勢の観察は紹介元であるスクールにとっては非常に良い判断材料です。申し込み時から選考が始まっていると考えてください。
今だから言える、スクール選択の基準
コースの目的を確認する。
スクールによっては、企業の就職サービスは行なっておらず、教えるだけのところもあります。あるいは、就職サポートは行わず、フリーランサーとして、独立できるまでサポートするスクールもあります。もし「収入の改善」が目的なら、就職実績で選ぶべきでしょう。
就職実績を確認する
就職を希望される場合は、いったい何人の人が受講して、そこからどのくらいの就職者が出ているのかを事前に確認しておきましょう。できるなら、みなさんと同じ環境の人がどの程度就職したのかを聞いてみましょう。
例えば、いくら就職率が高くても、もともとSEの人がフロントエンジニアとして就職したのかもしれません。みなさんが未経験者なら、その就職率を確認してみてください。仮に高い場合、そのカリキュラムは企業ニーズを満たしている可能性が高いでしょう。
誰が教えるのか?
実務経験が豊富な講師がいいことに越したことはありません。アドバイスも的確です。
質問への回答時間とその返信期間
当然、質問が即座にでき、その回答が即座に返ってくることが学習効率を高めます。スクールによっては、質問への返信が即座ではない場合もあります。返信に1日(24時間)でも正直長いと感じます。
カリキュラムの中でどの程度の制作物を作るのか?
私の実感として、制作物を作れば作るほど自分の課題が発見でき、その解決ノウハウがたまります。それが少ないカリキュラムでは、実践的スキルが身につくのか、非常に疑問です。そこで、制作物の数と必要とされる時間を確認して、他のサービスと比較してください。
このスクールに通って良かったこと
私がこのスクールで学んだことの中で一番大きかったことは、「自活力」です。サポートを得られなくても、ある程度までは制作できる力です。分からないは自分で調べたり、エラーが出ても自分で解決する力です。
具体的内容で言えば、WordPressのカスタマイズ方法です。これは非常に大きかったと感じています。もともと集客手段を得る目的で受講しました。このスキルの獲得は、この目的に大きく貢献するものだからです。
今では、学んだスキルを使い仕事をしています。具体的には、集客のための自社のサイトをWordPressで制作し、そこから年間60万弱の利益を得るまで成長しています。2年目ですので、今後も増えることが予想されます。少なくとも、受講料分は元は取れています。
プログラミングスクールに通おうか悩んでいる人へ
長く続ける覚悟を持てるか?
以前、私はコースを受講するにあたり「覚悟」を求められました。しかし、今は「長く続ける覚悟」が求められていると感じます。
長い道のりと新しい技術のキャッチアップ
コース終了は更に長い道のりが待っています。例えば、フロントエンドエンジニアを目指すならjavascript/jQueryのスキル、WPをもう少し自在に操りたいならPHPのスキルも必要です。
つまり、学び続けなければ求められる水準に達しないということです。
加えて、どんどん新しい言語や書き方が生まれ、情報は数年で古くなる世界です。新しいスキルを次々習得していかなければなりません。私が「長く続ける覚悟」が求められると言った理由です。
「就職」や「収入アップ」など打算はあってもいいのですが、究極的には物を作るのが「好き」という純粋な感覚を心の底辺に持てるかどうか、だと思っています。
こんな人に向いています。
これを読まれている方は、誰もが向いている世界ではない、ということは薄々感じていらっしゃると思います。
そこでスキルを用いて、どこを目指すかを明確にしておきましょう。私のように、自社サイトの制作、更新程度であれば特殊なスキルはいらないでしょう。
ですが、未経験からスクールを通じてエンジニアとなり、キャリアを積みたいなら、安易な気持ちは禁物です。
私が周囲を見た中でやれる人の特徴は以下のような人たちです。
- 柔軟に新しいものを吸収していける若い人
- 純粋に物造りが好きな人、そのための学習を厭わない人。
- 作りたいものが具体的にイメージでき、その実現にモチベーションが高い人
- 今の自分の業務に強い問題意識を持っており、それをプログラミングスキルで解決したい人
上記を補足すると、年齢は認めたくはないですが、確率論では20代で決断した方の方が比較的上手くいっています。
次に、自分が作ったサービスが認められ、世に出ることを想像するワクワク感やそれを完成させた達成感がある人の方が未経験からでも長く続いています。
日々のコーディング/プログラミングは地道な作業とエラーの連続です。それに挫折しない心の支えは必要です。
より強い覚悟が必要な人
逆に、以下のような人は、更に強い覚悟が必要です。
- 他力本願な人(自分で調べること、考えることを人に任せる人)
- 学習自体が苦手な人
- スキルは習得したいが、何を作りたいかが明確ではない人(最初から明確でなくても、スキルを習得した後で、作りたいもののイメージが顕在化する人もいます。)
最後に、向き不向きはあるものの、私は、プログラミングの可能性と有用性を信じて疑いません。特に、私がこれをやっていて良かったと思う瞬間は、自分が考えるサービスに躊躇なく踏み出せ、また、その実現ハードルが下がったことです。
これを読んで、少しでも自分に向いていると思うなら、ぜひその魅力に触れることをお勧めします。